ニュートンは太陽光線をプリズムを通して壁にあてると、無色の光が七色の帯に変化することを発見した。
色はモノの中にあるのではなく、光の中にこそある。でも光には色はない。
あるのは波長の違う光だけで、それが目に入って、脳のしくみで色を感じている。
例えば、
クマノミは自分の隠れ家とするイソギンチャクを紫外線を反射して、目印になる模様に見えているのかもしれない。
そうだとすると、われわれが見ている色彩も、彼らの間では別の識別色になっているように思うのです。
紫花を咲かすゴカイの仲間
ソフトコーラルのわきから薄い膜質の管を伸ばし、その管の中から毛虫のような頭部を出したり、ひっこめたりして暮すケヤリムシというゴカイの仲間がいる。
頭を出すと「さい冠」が開き、小さな紫色の花が咲いたようで美しい。そのさい冠で呼吸するとともに、プランクトンなどを捕まえて餌にしている。人が近づくとぱっと冠を閉じて、体が管の中にひっ込んでしまう。
群生しているところでは、見事な花園が開花する。
◉サイズ さい冠の直径8センチ
◉撮影地 沖縄県 与那国島
寄生虫と免疫システム
フトヤギという八放サンゴのポリプを食べ、その枝に卵を産んで寄生するトラフケボリガイ。
人間もまた、昔から回虫などの寄生虫と苦い経験を重ねてきた。しかし、現在医療、征性面の進歩によって寄生虫はほとんど駆除。ところが反面、アトピーや花粉症が急増。これは寄生虫の退治が一因だという説がある。免疫システムが目標を失って狂いが生じたという。海中ではずっと昔から何事もなく、宿主と寄生者の暮しが続いている。ひょっとすると彼らは、人間より優れた生活システムを本能的に察知しているのかもしれない。
◉サイズ 殻長2センチ
◉撮影地 静岡県 東伊豆
砂底に花開く花虫類
砂底に生息するヒメハナギンチャクは、体表から分泌した粘液でつくった円筒状の棲管内に棲む花虫類である。
書いて字のごとく、海に咲く花にたとえられ、色彩変異の富んだ美しいものが多い。
紫色、黄色、茶褐色などの個体を眺めるごとに、競い合う生け花の「美」を思いおこす。
固着、吸着の必要がないため、体の下端は単純にすぼまり、上端は口となり、花のような触手を咲きほこっている。
◉サイズ 触手間の直径15センチ
◉撮影地 新潟県 佐渡ヶ島
幹の内部は迷路で謎だらけ
ウミトサカは塊状、棍棒状、樹状、など形態はいろいろ。大きなものは人の背丈より長く、2メートルを超えるものもある。カラフルな色彩を誇り、海底に乱立している景観は海中林を思わせる。
八本の触手を持つ冠部は、イソギンチャクに似たポリプでプランクトンを食べる。
足盤でしっかりと岩などに固着し、退縮自由で激しい潮流にも対応できる生命力を発揮して、海底を彩っている。
◉サイズ 群体の高さ20センチ
◉撮影地 愛媛県 宇和海
イソギンチャクをゆりかごにする知恵者
シライトイソギンチャクの触手の間から顔を覗かすハナビラクマノミ。
一般的にオレンジ色が多い個体の中で、珍しく紫色のイソギンチャクに自ずから同化するように極った彩色で生息する。
クマノミは日本近海で6種類見られるが、全てイソギンチャクと共生している。
種によって好みのイソギンチャクが決る。
彼らは生まれた時から、自分と、相生のいいイソギンチャクの匂いを知っていて、この能力が遺伝するらしい。
◉サイズ 7センチ
◉撮影地 沖縄県 座間味島