緑 色 Green

新緑のころになると、木々の緑が眩しい季節となる。
地上より約一ヶ月季節がおくれるといわれる海中も、初夏の訪れとともに藻類が繁殖し、
藻場は緑色の世界を展開する。
しかしそんな季節の変化と関係なく、海中は、ちゃんと他にも緑をまとった生物が存在しているから、
海中の色彩は目を楽しませてくれる。
やわからな風にそよぐ草原の緑も美しいが、海中の緑生物のまた違った極彩色の妙は、
さらに神々しく感じるのです。

緑模様がアートの色彩美

シャコガイの仲間は日本丘海で八種知られているが、いずれもサンゴ礁の海に生息する。
ヒレシャコガイは人などの異物が近づくと、影を感じて即座に殻を閉じてしまう。
息をこらえて静かにしていると、殻からはみ出すように外套膜を開く。紫や青い斑絞をちりばめた彩色模様の体は、人間の想像もつかない摩訶不思議な魅力を感じる。
これからのファッションデザインは、海の模様から学ぶようになるかもしれない。
◉サイズ 殻長40センチ
◉撮影地 沖縄県 石垣島

虎の威を借りた省エネ泳法

魚たちはいつも外敵から捕食されないかと、危険におびえながら生活している。大多数が素早く逃げることに活路を見いだしてる中に、むしろ大型魚類を積極的に利用しようという要領のいいコバンザメがいる。
ウミガメの背甲に吸盤をひっつけ「虎の威を借り」れば、後はこっちのもの。
移動は省エネ泳法。食事時にはちゃっかり、おこぼれまでいただく。はた目には、なまけ者にみられるが、カメの甲らに付く寄生虫を食べているという。
◉サイズ 全長60センチ
◉撮影地 沖縄県 石垣島

海底に咲く美しい華

砂地の海底に、ひっそりと触手を開げたスナイソギンチャクがたたずむ。美しいピンク色をしたものや、緑色、黄色、黒色など色彩変異がすこぶる豊富である。なかでも緑色が目を引き、海底に咲く花を見るようだ。
しかし、触手にちょっとでも刺激を与えると、さっと砂底に姿を消してしまう。
触手の刺胞の毒は、人を刺すので注意が必要。ところがこの触手の裏側に、小さなエビなどが棲む。
毒をものともせぬ保身術なのだ。
◉サイズ 触手環の直径15センチ
◉撮影地 静岡県 東伊豆

オウムのような口ばしでサンゴをかじる

サンゴ礁の海に生息するハゲブダイは、バリバリと音が出るほどサンゴをかじる。
付着性藻類をサンゴもろとも口に入れ、そして噛みくだいたカスをエラ穴からはき出す。
また泳ぎながらフンとして排泄する。その排泄された粉末が堆積して、海底の白い砂地の一部となる。
夜休むときは、捕食者が嫌う粘液を口から出して自分の体をすっぽりと包んでしまう。
こんな保身術を身につけた知恵者なのです。
◉サイズ 体長40センチ
◉撮影地 沖縄 座間味島

目もとパッチリのおちょぼ口

緑地の体に小紋が凛として散りばみ、青いふちどりが美しいサザナミヤッコが優雅に泳ぐ。
個性的でその極まった姿に、見とれてしまうことがある。
好みの餌は藻類などの付着生物で、死威サンゴのがれ場で夢中になって餌をついばんでいる姿をよく見かける。
緑色が最もさえるこの美しい魚は、沖縄では刺身や焼魚として食卓をかざる。
鑑賞して楽しみ、食って舌を潤す「幸多き魚」の代表といえるだろう。
◉サイズ 体長40センチ
◉撮影地 沖縄 座間味島

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